ACT4 誓約

ACT4 誓約

少し前を行く、白に馬に跨る秀麗な姿。それ自身が美術品のように、絵になる姿。深い緑の中を、金色と白色が互いを際立たせるように輝いて見える。

けれども、その外見に似合わない馬の蹄の音は、荒々しくペースが乱れていた。

手綱を操る顔は、蹄音をそのまま表していた。静かな森の中を、荒れた感情のままに突き進んでゆく不機嫌な顔。機嫌を取ろうとしても、つっかかって来る口調。こうなっては手がつけられないのは、いつものことと十分承知している。

キルヒアイスは、深い溜息とともに、頭を振って手綱を握り直した。

さて、どうしたものか……と、思案を巡らせつつ、そっと苦笑を浮かべる。なんだかんだと溜息は出るが、それでも、不機嫌な姿にさえ見惚れてやまない。さらに、どうやって宥めるのか、宥められるのは自分だけだと己惚れてしまうのは、どうにも手に負えないほど彼を愛しているのだ、と今更ながらに思い知らされて。

小さく頭を振って、何気なく空を仰いだ。先ほどから気になっていたのだが、空模様が怪しい。高山の天気は変わりやすく、さっきまでの陽気どこへ行ったのか、空は急速に曇り始めていた。

「雲行きが怪しいですから、やっぱりコテージに戻りましょう」

何度目かの問いかけをしてみるが、一向に戻ろうとする気配はない。

再び、重く吐息した。この休暇はずいぶん前から決まっていたのだ。人里離れた山荘で、誰にも邪魔されず昔が戻ったみたいなひと時。アンネローゼさまと3人での休暇。口の悪いラインハルトさまが、耄碌ジジイの生前最期の善意、と言ったほどだ。それが、だ。

約束の日、アンネローゼさまの屋敷にお迎えに行ったならば、女官が出てきて、皇帝陛下が朝から体調を崩しておいでなので看病にゆかれました、と言ったものだから、さあ大変。見る間にラインハルトさまの秀麗な顔は憤怒に彩られ、細く長い指はふるふると震えた。しかも、それ以上の説明もなく、女官は、預かっていました、と大きなバスケットと手紙を寄越しただけでさっさとドアを閉めたのだ。

大きなバスケットには、白い大きなレースのハンカチがかけられており、そっと捲って見れば、サンドイッチや果物、ケーキに飲み物がびっしりと詰まっていた。山荘に着いたら、3人で食べようと仕度されていたのだろう。手紙には謝罪の言葉と、二人で楽しんで来て、と綴られていた。

「ラインハルトさま、きっと雨になりますよ。降る前に戻りましょう」

無駄だと知りつつも、何度目かの問いかけをしてみる。

山荘に着くなり、早々、馬を借りて遠出に出た。気の荒い馬だから乗りこなすのは無理だと馬主に言われたにもかかわらず、苛立っていたラインハルトさまは、余計にその馬を選んだ。荒れる馬を制御することで、自分の苛立ちを抑えようとしたのかもしれないが。

キルヒアイスは仕方なく、馬主に推された馬を借り、バスケットをくくりつけて後を追っている。けれども先ほどから、空が気にかかるのだ。抜けるように青かった空が急に黒くなり、明らかに雨雲とわかるそれが空を覆って来ている。

未だ怒りを制御しきれていないラインハルトは、何度言われても聴く耳を持とうとはしない。今更だと知っていても、彼はどう宥めてよいのか、いつも言葉を探していた。

「まったく、あのジジイめっ!」

荒れる馬の手綱をグイと引いて、ラインハルトはどんどん森の中を行く。

空が光った。

落雷があるかもしれない。彼は決心して馬の腹を蹴ると、前を行く恋人の許へ向かった。

「ラインハルトさま、落雷があるかもしれません。帰りましょう」

「くそっ、まだ幾らも走ってないじゃないかっ!」

帰らない、と駄々をこねて馬の腹を蹴った。

俄かに広がる距離。

空が、また光った。

キルヒアイスは、心配そうに空を見上げて溜息を吐く。

「馬にあたっても仕方がないでしょう? 帰りますよ」

「嫌だ」

振り切るように、白馬は加速していった。呆れた彼も再び馬の腹を蹴ると、前をゆく金髪を追う。強引に手綱を握り、連れ戻すしか方法はなさそうだ、と意を決めて手を伸ばした刹那―――。

ゴロゴロゴロゴロゴロゴロ……ドーン。

馬の、狂ったような嘶き。

「あぶな……」

「わっ…!」

白い馬の前足が、高々と宙を蹴った。手綱を締め切れなかったラインハルトは、背から振り落とされまいと必死にしがみ付いた。前足が地面に着いて、漸く体制を持ち直したつかの間、突如暴走し始めた。

振り落とされまいと必死にしがみ付くのが精一杯で、とても制御できそうにない。激しく揺さぶられながら、猛烈な速さで木々の中を、道無き道を突き進んでゆく。

「ラインハルトさま!」

後ろからキルヒアイスが追う。

「ダメだ! 全然言うことを聴かない!」

必死に首に手を回し必死にしがみ付いたまま、彼は振り返って叫んだ。

まったくとんでもない事になった。これも、自分がキルヒアイスの言うことを聴かなかったからだ、気の荒い馬にこんな感情のままに乗ったからだ、と今更後悔してみるが、ラインハルトの乗った馬は一向に止まる気配がなかった。

ぽつぽつ降り始めた雨が、急速に激しくなってゆく。どこからか、水の音も聴こえてくるようだ。もしかしたら、この先は谷にでもなっているのかもしれない。暴走は止まる気配が無い。振り向く顔、追いかける顔に、不安が過ぎった。

雨音と、水の音。

川か、谷か。

この先に危険があるのは間違いないようだ。そして再び―――。

ゴロゴロゴロゴロゴロゴロ……ドーン。

狂った嘶き。

蹴り上げられた両足は、宙を蹴る。

「うわっ!」

先ほどよりもより高く傾いた背は、簡単に人を振り落とす。キルヒアイスは、落ちてゆく身体を抱きとめようと、必死に腕を伸ばした。

ドサッ。

枝の折れる音とともに、二つの身体が激しく地面に叩きつけられた。

「痛っ……」

足を折れた幹に叩きつけたようで、ジンと熱く疼いた。地面にぶつかった衝撃で、息も出来ず視界が暗くなる。走り去る馬の蹄。そして突如、悲鳴のような泣き声。

容赦なく頬に打ち付ける雨粒で、ラインハルトは急に我に返った。

「キルヒアイス!」

慌てて身体を起こせば、その下から痛みに顔を歪めた彼がいた。

「……大…丈夫…ですか?」

急いで抱き起こしてみる。目だった外傷はなかったが、歪んだ表情が痛みを物語っていた。

「キルヒアイス! 大丈夫か?」

肩に手をやりながら、痛みに顔をしかめる。それでも、無理に笑って。

「大丈夫です。それよりラインハルトさまは?」

おろおろと動揺し、大丈夫だ、と頷くのが精一杯で。どうしたらよいのか考えることすら出来ず、無意識にその手を差し出した。恐縮そうにラインハルトに支えられながら、彼はゆっくりと立ち上がる。傍には彼の乗っていた馬が、静かに鼻を鳴らしていた。

大丈夫だから、と顔を撫でてやり、何気なく白い馬が走り去った方を見た。二人は一瞬にして、血の気を失った。その先には、途切れた地面がある。高さは分からないが、おそらくは谷にでもなっているのだろう。危うく二人とも落ちるところだったのだ。

どちらともなく顔を見合わせて、安堵に笑みを浮かべる。急に強まってきた雨脚に、キルヒアイスは空を見上げて。

「帰りましょう。これ以上酷くなったら危険です」

馬の手綱を握ると、鐙に足をかけた。

「っ痛……」

瞬間、襲ってくる激痛。

彼は、乗り損ねて再び地を踏んだ。

「大丈夫か?」

心配そうに肩をさすって、今度はラインハルトが手綱を握った。ヒラリと軽い身のこなしで、馬にまたがる。そして、キルヒアイスに向かって手を差し伸べた。

ここで、もたついている訳にもいかない。痛みは一瞬のこと。馬に乗りさえすれば、あとは何とでもなる。彼は覚悟を決めると、差し出された手を握った。もう一度鐙を踏み、精一杯地を蹴って反動をつけた。

「うっ……」

苦痛に歪む顔。それでも手を握り締め、ラインハルトの後ろに跨った。はっ……と馬の腹を蹴って、もと来た道を引き返す。

強まる雨脚。

「ごめんな、キルヒアイス。俺が言うことを聴かなかったばかりに……」

あまり早く走ればキルヒアイスの肩に響くので、ゆったりとした速さで森の中を進む。雨粒が葉に当たって、ぱりぱりとうるさい音をたてる。

「そうですね。本当にあなたって人は……。ま、今に始まったことじゃありませんけど」

ラインハルトの両脇から手を伸ばし、手綱を握る。ぴったりと隙間なく合わさる背と胸。耳のすぐ傍で、恋人の声が聞こえることに、ラインハルトは少し恥ずかしい気がした。

どれくらい戻っただろうか。けれども一向に道は見えてこない。変化のない森の中。同じ樹木に同じ倒木。どこまでも覆い茂るシダ。同じ景色、繰り返される光景。

不意に馬の足取りが止まった。

「本当にこっちの方角でしたでしょうか?」

前を見て、ゆっくりと後ろを振り返る。違う眼差しが、左右を見比べる。果たして、後ろが前か。前が右なのか左なのか―――。

「……やはり、迷ったのか?」

と、言うことでしょうか……と、キルヒアイスは困惑の声を上げて手綱を引いた。

「困りました。迷ったときは無闇に動かない方がいいのですが、この雨では……」

見渡す限りの樹木。多い茂る葉。天を仰げば、降り注ぐ雨。

「ここにこうしていても、身体が冷えるばかりだ。もう少し移動して、雨がしのげる場所を探そう」

そうですね、と彼は再び手綱を握った。痛くても、さっきよりもペースを上げて進む。

張り出した枝をくぐり、葉を掻き分けて進む。

すぐ目の前に見える金髪は、すっかり濡れてしまって地肌まで見えている。寒くないように、とより身体を密着させて、先を急いだ。そして―――。

突如、開けた場所に出る。

「これって……」

森の奥深く。訪れる人もなく忘れ去られた廃墟。尖がった屋根の先、半分朽ちたシンボルが、かろうじて何であったのか想像させる。

「埃りっぽいでしょうけど、雨はしのげそうですよ」

朽ちた扉は既になく、代わりに覆い茂ったツタが暖簾のように垂れ下がっている。二人は馬から降りると、ツタを掻き分けた。

薄暗くてはっきりは見えないが、隅の方へ積み上げられたまま腐った家具類が見える。あとは駄々広いホールになっていて、石の間からは痩せた木が生えていた。

手綱を引いて馬も入れると、適当な石の突起にくくりつけた。落ち着いたのか、暢気に石の間に生えている草を食べ始めた。

二人はその様子に緊張を解されたのか、クスリと笑ってバスケットを降ろした。草も生えてなく、平らな石畳を探して腰を下ろした。雨はしのげるが、朽ちた窓には当然ガラスのようなものもなく、場所によっては雨が降り込む。

「止みそうにありませんね」

寒いのか、ラインハルトが身体を寄せてきた。詫びるように見上げて、大丈夫か? と、視線を送ってくる。本当に悪かった、と反省しているのだろう。彼には甘いキルヒアイスのこと、穏やかに笑って安心させようとする。

「寒いのですか?」

ぴったりと寄せ合った身体は、どちらともなく震えていた。彼は肩を庇いながら立ち上がると、朽ちた家具らしきものの残骸へと近づいた。

何度か往復してラインハルトの座っているすぐ先へ、適当な大きさの木材を積み上げる。

「ラインハルトさま。そこの吹き溜まりになっている枯葉をそこに」

組み上げた木材の隙間へ、言われたとおり枯葉を詰め終わると、彼はバスケットの中からライターを取り出した。

「出掛けに入れておいたんです。まさか役立つとは思いもしませんでした」

枯葉はすぐにパチパチと音を立て始めた。程よく乾燥して朽ちた材木は簡単に火が着く。俄かにぬくもりが頬を照らし、冷え切った肌を温めてくれた。

二人は並んで腰を下ろす。

ゆらめく炎が、ラインハルトの白い頬を撫でる。

これでは乾きにくいから、と二人は上着を脱いで火の傍に並べた。そして身を寄せ合い、暖をとる。

「何か飲み物、ありませんでしたかね……」

バスケットを引き寄せてカバーを捲れば、白い大きなレースのハンカチ。隅にはアンネローゼのお手製の刺繍が見える。それをラインハルトに手渡すと、彼は感慨深げに見入った。

バスケットの中にはポットがあった。少し冷めたコーヒーだったが、今はこれで十分。蓋のカップに並々と注ぎ、二人で分け合って飲んだ。身体に染み入るぬくもりに、どちらともなく、ほう……と、息を漏らす。

「俺は本当に非力だな」

淡い炎の中でハンカチの刺繍を見つめ、ラインハルトはポツリとつぶやいた。

「姉と休暇をともにとることもままならず。助けようとした姉に、逆に救われてばかりだ」

怪我を負っていない方の肩に寄りかかってくる。

「お前にも、怪我を負わせて……」

ごめん、痛かっただろう? とそっと手を伸ばしてさする。

普段と違いうなだれた肩は、か細く華奢で頼りなげだ。凛とした声も、はりを失っている。こんな時こそ、思う存分甘やかして守りたいのだけれども……。

自分の抑えきれない感情のために、迷惑をかけてしまったのだと、深く傷ついている様子。こんな時の不用意な慰めの言葉が、返って深く傷つけることになると知っている彼だからこそ、何も言わず、ただじっと黙っていた。

「姉上を盗られて9年。力を得ようと必死にここまで来たが、9年かかっても、ここまでしか来ていない」

レースの白いハンカチを握り締め、深い吐息を漏らす。その横で彼は、寂しげな横顔を見つめ自身を責めた。

非力なのは自分とて同じこと。この姉弟を守るのだと誓いを立てて、いったいどれ程の月日が流れたことだろうか。ラインハルトと共に生き、同じ高みを目指し、いつかアンネローゼをこの手に取り戻して幸せな二人の姿を見たい、と。それなのに現実は。

焦ってはだめだ、と頭では分かっている。今の出世さえも、驚異的だということも。けれども、こうしてラインハルトがふせる度に、どうしようもない非力さを突きつけられて、己が身を責めるほか、苛立ちを鎮める術を知らないのだ。

寄りかかる華奢な肩を抱き寄せた。倒れこんできた金色の髪が、鼻先をくすぐる。

「キルヒアイス。……俺達は、姉上を取り戻せるよな」

決して、弱気になっている訳ではない。もしや取り戻すことができないのでは、と疑っている訳でもない。ただ、確認したかったのだ。それはキルヒアイスにだけ見せる姿。

「俺達は、姉上を取り戻せるよな」

「もちろんですよ」

肩を抱かれたままラインハルトは、彼を見上げた。いつものやさしい顔。穏やかで、自分を包み込んでくれるあの、青い眼差しがそこにあった。

「焦りは失敗を招きます。ラインハルトさま、焦ってはなりません」

うん、分かっている……と、小さく頷いて身体をすり寄せる。

雨はまだ降り続いていた。雨脚は激しいようで、外は日暮れのように暗い。所々雨漏りはしているが、炎は暖かく二人を包んでいた。

静かな時の流れ。炎はパチパチと音を発し続ける。

雨音が続いている。

水滴が、激しく葉を打ちつけた。

寄り掛かる華奢な肩。乾いた金髪が、さらさらと頬をくすぐった。

何の疑いも、何の不安もなく、無防備に凭れる身体。

痛めていない方の腕を伸ばすと、抱き寄せた。

炎に照らされて色づいた顔が、上がる。

まっすぐに見つめてくる蒼氷色の眼差し。

いとおしく、いとおしく、肩を抱き寄せる。

「キルヒアイス……」

甘い響きに、身が甘く痺れた。無性に触れたくて、顔を傾けて寄せる。触れる柔らかな唇。重なることが当然のようにピタリと合わさった。

いとおしい、ラインハルトさま。

「……愛しています」

うん……と、頷いたような、声を出したような。けれども塞がれた唇は、もう次の言葉を紡いでいた。絡まる舌から零れる水音。愛の告白を想いながら交わすからか、水音は言葉にも聞こえるのだ。

「なあ……本当に取り戻せるよな」

いたずらに唇を離したり、絡ませたり。頬にくちづけて、耳を噛んで。

「ええ。必ず」

「そしたら、3人で暮らせるのか?」

ちょうどラインハルトの耳たぶの下に唇を這わせているところで、思わず、ええ―――と、うっかり返事をしそうになった。

彼は動きを止め、しげしげとラインハルトの顔を見つめた。綺麗な蒼氷色の瞳が、不安げに曇る。

「ダメか?」

様子の変わったキルヒアイスに、ラインハルトは心細く訊ねた。その姿は、何も知らない無垢な少女のようで、むしろ自分一人が疚しいことを考えている気がして、思わず口籠る。

「ダメって……。一緒に暮らして大丈夫なんですか?」

ますます怪訝そうに首をかしげ、大丈夫とはどんな意味だ? と理解できず、不安一杯の表情を浮かべる。純真な少女のような眼差し。疑うことを知らず、嫉妬や欲望など、一切無縁のようだ。

まったく……これでは私一人が汚れているみたいじゃありませんか……と、小さく吐息して。

「私には、そんな自信ありませんよ」

彼はふう……と、吐息混じりに、呆れ気味というか苦悩というか、とにかく重い顔をして頭を振った。この人が鈍感な人だったと言うことをすっかり忘れていた、と眉間の皺は見る間に深くなった。

「なあ、どういう意味だ? またお前、俺を鈍いとか言って呆れているんだろう?」

そこまで分かるならば、どうして? といつもの天然の鈍さ加減に泣きそうになる。悪気はないのだと十分承知していても、自分とて言い難いことだってあるのだ。その辺りをいい加減察してくれてもいいのでは? と願わずにはいられない。

「……もし、3人で住んだなら、ラインハルトさまはこの先どうなさるおつもりですか?」

「この先って?」

無防備な返答に、彼の皺は溜息とともに更に深みを増した。忘れていた。すっかり忘れていた。はっきり言わないとこの人には伝わらないのだということを。願ったところで成長は見られない。むしろ期待するだけ、落胆する自分が可哀想というものだ。

ここで誤魔化しても仕方がない、と決心して、ニブチンでも理解できるストレートな言葉を選んだ。

「はっきり申し上げますが―――。アンネローゼさまのいらっしゃる家で、私達はどうやってこの関係を続けてゆくのですか? ちゃんと隠しおおせますか? それともカミングアウトしますか? 同じ屋根の下で、もしや壁を隔てた隣にいらっしゃる状況で、セックスが出来ますか?」

蒼氷色の綺麗な瞳が、一瞬にして瞠目した。

「それとも、一切なしにしますか? どちらにしても私は無論のこと、ラインハルトさまにも耐えられない状況だと思いますが」

とうとう言ってしまった。一つ屋根の下、最愛の弟は幼馴染の男と寝ている。しかも、弟のことをよろしくたのむ、と願った相手とだ。そんな意味で頼んだのではない、と嘆かれるのがオチではないか。

「もっとも、アンネローゼさまがいらっしゃれば、恋どころではないかもしれませんけど」

瞠目した瞳は、はっと我に返って青い瞳を見上げた。いつも姉のことで頭が一杯なのだから、一緒に住んだならば、自分とのことなど忘れるだろう、とそう僻んでいるのだ。不思議と極端に鈍いラインハルトでも、この手の響きには聡いようで、瞬時に顔色が変わった。

「どういう意味だ? お前だって、姉上に憧れていたんだろう?」

「わがままで人の言うことも聴けない人よりは、遥かに憧れの対象ですね」

棘のあるラインハルトの言葉に、思わずキルヒアイスも棘で返してしまった。肩に手はかかってはいるが、ただ置かれているだけなので、二人の間は自然と開いた。

パチパチを揺らめく炎が、白い頬を照らし出す。

どれくらい時間がたっただろうか。すいぶん長い間睨み合ったままでいたが、ふいにキルヒアイスが小さく吐息して。

「すいみせん。そんな意味で言ったんじゃありません。泣かないでください。ほら、こっちへ来て」

泣いてはいなかった。けれども今にも泣きそうな顔で、キルヒアイスを見つめていたのだ。最初は怒りを含んだ顔だったが、次第に悲しげに歪んでゆき、しまいには、今にも頬を涙が伝いそうだ

素直に隙間を埋めてくる。寄りかかった肩は再びぬくもりに包まれた。

「……考えもしなかった。確かに姉上には隠さなければいけないよな」

「同性愛は禁じられていますからね。迫害は免れませんし、偏見も根強いと思います」

離れたくない、とラインハルトは身体を寄せてきた。その想いは彼とて同じで、肩に腕を回し、ぎゅっと抱き寄せる。普通の男女間の恋愛でも、気持ちが揺れ動き、悩み、壁にぶつかることはたくさんある。それが微妙な同性同士ならば尚のこと。些細な言葉一つで不安になり、悪気なのないことでも嫌がらせになってしまう。微妙な立場。不安定な関係。なんと足場の悪いところで、自分達は恋を積み上げていかなければならないのか。

「取り戻せた訳でもないのに、今悩むこともありませんね……」

取り戻せないと嘆いているのに、取り戻した後のことを今悩んでも詮無きこと、と彼は小さく吐息してラインハルトを抱き寄せた。

「なあ、キルヒアイス……」

肩に頬を乗せて、ラインハルトは小さな声を紡ぐ。彼は聞き取り難いので、更に密着するように顔を傾けた。

「俺は、気がついたときにはお前のことを好きになっていた。でも、ずっと片思いだろうと。通じ合うことなど絶対にないと思っていた」

パチパチと穏やかな炎が二人を包む。雨脚は弱くなったのか、さほど音は聞こえない。

「ずっと苦しかった。お前が姉上を見るたびに、辛くて―――辛くて。好きだと言ってくれたときは、本当にうれしかった。今でも、あのときの喜びは忘れられない」

在りし日の出来事を思い出して、キルヒアイスは感慨深げに瞼を閉じた。

「私達は、長い時間をかけて漸くここまで来たのですね」

うん、と小さく頷いて、肩にあるキルヒアイスの手に手を重ねて。

「こんなに長い時間をかけて結ばれたのに。こんなにも愛しているのに。俺は些細なことで、いちいち不安になるんだ。決してお前を疑っているわけじゃないのに」

重ねられた手を、指を絡ませて握る。こめかみや額にそっとくちづけて、揺らめく炎を見つめた。

「それは私も同じです。疑っているわけでもないのに、無性に不安になるのです。でも、それが恋をしている証拠ではないでしょうか?」

恋は、自分の想いを相手に受け取ってもらい、そして応えてもらおうと必死だ。だから自分がどう思われているか、相手がどう思っているか気になって仕方がない。些細なことで行違いを起こし、いつも不安にさらされている。

「不安にならないって、出来るのか?」

静かな沈黙に包まれた。二人身体を寄せ合い、じっと炎を見つめる。

不安を感じないでいられたら、どんな楽か知れない。けれどそれは何を意味するのだろうか。相手に興味を失ってどうでもよい存在になったら、不安など感じないだろう。けれども、そんなことなどありえない。自分の中から、キルヒアイスが、ラインハルトが消えることなど決してないのだから。

「恋ではなく、愛になれば感じないかもしれませんよ」

「愛?」

もたれた首を起こして、ラインハルトは彼を見上げた。揺らめく炎が、青い瞳に映っている。

「愛って、無償の愛って言いますでしょ? 相手にどうしてもらいたいか、ではなく。自分がどうあるべきか、ですね」

つまり……遠く離れていようとも、想い続けることはできるでしょう? たとえ相手が別の人を選んだとしても、その人が幸福そうに笑っていたら許すことができる。とにかく、愛した人の幸福が、自分の全てであること。うまく言えませんけど……と、恥ずかしそうに笑って、照れ隠しのように一つ咳払いをした。

「よく分からないが……。要求するのではなく、与えろ、ということか?」

ま、そうなりますか……と、何とも簡素に約されてしまった自分の考えに苦笑した。しかしながら、言うべきは容易いが、いざそうあろうと思うのは難しいものだ。欲もあれば、プライドもある。何もかも受け止めて、太陽のように包み込んで愛情を注ぐなど出来るだろうか。

「難しいが、何とも甘い響きだな。そんな風に互いを想いあえたら、本当に幸せだな」

「他人事ですか?」

いや……と、バツが悪そうに俯いた。まだ子供っぽい仕草をみせるラインハルトが愛しくて、キルヒアイスは怪我をしていない方の手で、乾いた髪を梳いた。

雨は既に止んでいる。静かな空間に二人きり、何ものにも邪魔をされないひと時。忙しく戦いに明け暮れる日々の中で、こんな風に話したことなどなかったかもしれない。

「次元が違うのだな」

小さな声で呟いた。何かの話の予兆に聞こえ、キルヒアイスは敢えて問い返さず、黙ったままでいた。

「人に知れるとか、逢えないとか、自分を見てくれないとか、本当はそんなことはどうだっていいんだ。お前が俺のことを好きだと想ってくれる。そう想ってくれるお前が、いてくれるだけで……」

材木の燃え崩れる音に混じって、確かにそう聞こえた。髪を梳くことを忘れ、突然の胸の高鳴りに、キルヒアイスはそっと天を仰いだ。

「この世に存在してくれるだけで……」

眦が熱を持つ。締め付けられる、胸の高鳴り。恋と気付いたあの頃のままに、いや、それ以上に、熱く滾るこの想い。今、彼は心の底から感じていた。ラインハルトと知り合えた奇跡を。そして、傍にあることを許された幸運を。

「私は、幸せです」

最後の一言を奪い去って、キルヒアイスは抱き寄せた髪にくちづけた。

炎を見つめていた顔が、ゆっくりと振り返る。最後の台詞を盗られた悔しさと、告げられた恥ずかしさの入り混じった眼差しが、青い瞳を見つめた。

全身を駆け巡る、この想いが伝わるだろうか。激しく高鳴った、この想いが見えるだろうか。溢れ出るラインハルトへの想いを、目に見えるものに変えることが出来るならば見てほしい、と熱い想いで見返す。

おずおずと手が伸びて、キルヒアイスの首の後ろを包み込んだ。

ゆらめく蒼氷色の瞳。

小さく唇が動いた。

「お前という存在があるだけで……」

満たされる……と、吐息だけの言葉を紡いで睫を伏せると、ゆっくり唇を重ねた。

熱い情欲を伴わない、それ。

そっと、溢れ出る想いの全てを注ぎ込むように。

身体が、熱く満たされてゆく。

いとおしい、と言う愛情の炎で。

きっとこの先も、仄かに、そして揺らぐことなく燃え続けてゆくのだ。

燃えて、燃え尽きて、真っ白い灰になって、一つに混ざり合うまで。

「誓いを、たてませんか?」

今更だと思う。こうして互いの心の内で、存在を確かめ合っていれば、それでいいのだと。何を疑うことがあろうか。けれども、だからこそ。

来て……と、火の灯る材木の切れ端を握ると、積み上げてある家具の朽ちた場所まで導いた。松明のようなそれを、壁に向かってかざす。

「あ……、やはりそうだったのだな。さっき屋根の上で見たから」

「まだ、人類が地球に留まっていた頃、多くの人が祈りをささげた場所です。今では忘れ去られ、信仰する人もいなくなったのでしょうけど、細々と続いていたのですね」

高い天井まで壁一面に描かれた女性の絵。色の劣化が激しく、所々剥がれ落ち、石がむき出しになっている。それでも辛うじて、自愛に満ちたやさしげな女性が、小さな命を抱いている姿が見えた。

「前に決闘をした時、歴史を調べていたら偶然見たんだ。オーディンにも在ったとは驚いたな」

松明を壁に立てかけ、壁画を照らし出す。見上げるラインハルトの手から、アンネローゼの白いハンカチを取ると、端を持って広げた。

「……痛ッ……」

腕を上げようとして、彼の顔が苦痛に歪んだ。

「大丈夫か?」

慌てて壁画から彼の方を見遣ったラインハルトは、心配そうに痛めた肩を撫でた。大丈夫ですよ、と無理に笑って手を握る。そのまま壁画に向き直ると、片手だけでそっと金髪の上にレースのハンカチを被せた。

「俺が新婦か?」

不服そうに、レースの越し蒼氷色の瞳が見上げてくる。同じ男として生を受けたにもかかわらず、妻にさせられている自分がおかしかったのか、照れた苦笑だ。

「仕方ないですよ。新婦は美しいものだと相場が決まっているのですから」

青い眼差しにやさしい微笑を添えて、そっとラインハルトの頬を撫でると、彼は赤くなって俯いた。

卑怯だ。あの顔でやさしくされたら、何も言い返せなくなってしまう。それと知っていてキルヒアイスはいつもあの顔で自分を言い包めている、とラインハルトは常々不満に思っていた。けれども、言い返せなくなるのは、それだけ彼のことが好きなのだと突きつけられたようで、恥ずかしい方が先立ってもいる。

一瞬、しんと静まりかえったホールの中。

未だ握られたままの手に、ぎゅっと力が籠められた。そして、静かなる声―――。

「私たちは、互いに夫と呼び」

はっ……と、レースの影でラインハルトは息を潜めた。

「良いときも悪いときも、富めるときも貧しきときも健やかなるときも」

握られたままの手に、細くしなやかな指が重なった。

「死が二人を分かつ迄……」

レース越しに蒼氷色の眼差しが、青い瞳を真っ直ぐに見上げる。

「互いを愛し、慈しみ」

逸らされることのない、交し合う視線。溢れるいとおしさが、握り合った手から、合わさった眼差しから伝わる。

脳裏に明滅する様々な光景。初めて出会った庭先でのこと。嫌がらせの喧嘩に明け暮れた、幼き日々。日が暮れるまで遊んだなら、甘いケーキと温かなチョコレートの香り。姉を失った寂しさ、悔しさ。幼年学校での日々。そして、戦場。何度も死にそうな目に遭いながらも、その度に二人力を合わせて生き延びて来た。

この密やかなる気持ちを伝えたのは、何時だっただろうか。

「貞節守るとこを誓いますか?」

部屋にこっそり忍んでは、そっとくちづけた。

初めて抱きしめられた腕の中は、本当に心地よくて。

このまま、時が止まってしまえばいい、と。

誰にも渡したくはない、と。

たとえ、それが姉であったとしても。

誓いを声に出せる喜び。好きな人に好きと言える喜び。ほかの誰でもない、自分に誓いを求めるいとおしい声。それに応えるのに何の躊躇いがあろうか。

「……誓います」

ああ、―――キルヒアイス。

熱く滾る想いを全身で噛み締めて、ゆっくりと瞬いた。彼は小さく息を吸って、不安と期待の揺らめく瞳を向けて問う。

「誓うか?」

レース越しの小さく震える声に、キルヒアイスは、誓います、と即座に答えて、静かにレースをめくった。

瞬いて、見上げる眦から、涙が一滴零れ落ちる。

白いレースの下で、金糸の髪が揺れた。シミ一つない白磁のような肌。涙を湛えた蒼氷色の瞳は、繊細なガラス細工のようで。この身に触れることを許す唯一の人のために、わずかに開けた唇は、今か今かと待ちわびている。

誓います―――と、もう一度囁かれた声が、何時までも甘い余韻を胸に響かせた。

薄暗い松明の光。鬱蒼と茂る、森の中の廃墟。遥か昔に忘れ去られた聖なる母の前で、二人は永遠とも言える愛を誓った。

誰に聴かせる訳でもない。互いの気持ちを互いに誓い合うだけの、儀式。拙く粗末なそれは、けれども二人にとっては至上とも思える瞬間で。痛めた肩を庇いつつ、誓いのくちづけは永遠に続く。

雨は完全に止んでいた。外はすっかり闇に包まれ、夜虫の鳴き声が聞こえてくる。

二人の愛に満たされた廃墟。

長い時間をかけてここまで来たが、二人の将来は、まだスタートラインに立ったばかり。これからさらに困難で険しい道が待っているだろう。けれども誓いどおり、良いときも悪いときも二人で力を合わせて歩んでいけたら、と。まだまだ若い彼らの心には、そんな甘い想いが満ちていた。

終わり

お久しぶりです^^;

何と言っても赤金は、何年も書いたことがなかったですからね……。

はっきり言って忘れていました。最終話だけ残っていたのが気になってはいたのですが、何をどう書いてもオチもなにもない、ただの甘い話になるとしか思えなかったので、長い間頓挫しておりました。

まあ、一応ケジメ的なものということで・・・

(2005.9.22)

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